2010年 03月 03日
予告/美術家たちのオリジナル装幀展ーその4
本を愛する美術家たちのオリジナル装幀展
3/11(木)〜22(月) ※17(水)定休 ☆詳細はこちらから…
本を愛する美術家たちが、美にこだわってそれぞれの愛読書の為に特別に装幀、また読書グッズを制作して下さいました。手法は違っても、それぞれの個性・感性が光り、まさにオリジナルな一点物です。今回の装幀展に出品された作品ファイルと作家からのメッセージを、これから少しずつご紹介しましょう。・・その4
ご紹介しきれない作品も多く、興味を持って下さった方はぜひ会場にお越し下さいませ。
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近藤 英樹:版画家
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[1]「忘れられた日本人」宮本常一 著 ワイド版岩波文庫
<作者メッセージ>
日本中をくまなく旅した民族学者、宮本常一氏。
彼が見聞きした話や人物の暮らしぶりが生き生きと描かれています。
本来、歴史を知るという事はこういうことなのではないかとじっくり噛み締めながら読んだ一冊です。
土のよい匂いがします。
[2]「銀河鉄道の夜」宮沢賢治 著 (新潮社文庫)
[3]しおり×6枚
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林 千愛里:絵描き
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[1]「放浪記」 林芙美子 著 新潮文庫
<作者メッセージ>
とにかく本が好きだ。なんでもかんでも読む。現代を生きる自分にすっと入ってくる作品があるのは不思議だなーと思う。この放浪記はその中の一つ。時代背景などは違えど、「そうそう、そうなんよ!」などと転げ回ったり、泣いたり、つらくなったり、おふみさんになって放浪しまくる。
そしてこんな絵になりました。
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原 陽子:版画家
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[1]「壇流クッキング」壇一雄 著 中公文庫
<作者メッセージ>
「食」にまつわるエッセイではなく「指南書」です。ただし、マニュアル本とは違い、著者にとって重要なところは徹底的にこだわり、読者に対しては「あとは好きに」とさっぱりしている所がよいです。台所に置きたい一冊です。
[2]「風化水脈 新宿鮫VIII 」 大沢在昌(光文社文庫)
[3]「テロルの決算」沢木耕太郎(文春文庫)
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廣澤 仁:版画家
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[1]「山頭火随筆集」種田山頭火 (講談社文芸文庫)
<作者メッセージ>
私の生まれは山口県防府市で種田山頭火の生家が近くにあります。ちょっと湿ったその句は、眠っていた何かをゆさぶるような、なくしてしまった大切なものを思いだし立ち尽くすように、懐かしくそして悲しい。
時々読みたくなります。二日酔いで自己嫌悪の時とかに。そして生き方がロック。松山にも縁がある作家でしたのでこの随筆集を選びました。
普段の制作ではシルクスクリーンの版画作品を作っていますが、今回はその版をインクで彩色してブックカバーにしました。
素材:テトロン、感光乳剤、インク
[2]「同時代ゲーム」大江健三郎 (新潮社)
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藤井 敬子:版画・造本家
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[1]「子規歌集」正岡子規著 土屋文明 編(岩波文庫)
<作者メッセージ>
歌を編んだものが歌集。そこで私は表紙に歌を織ってみました。
頁をつなぐ地道な作業の間にも、歌のひきよせるイメージに、空想の絵本をめくる楽しみがありました。本文の綴じかたが四つ目綴じ、外側はハードカバーの和洋折衷スタイルです。
[2]「柩の中の猫」小池真理子(新潮文庫)
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藤井 哲信:ガラス工芸家
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[1]ブックエンド
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古谷 博子:版画家
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[1]「ガラスの街」 ポール・オースター 著 新潮社
<作者メッセージ>
「ガラスの街」は「シティ・オヴ・グラス」として以前出版されていた本だが、新訳で新たに出版されたものである。
久しぶりにこの本を読んでみて、ポール・オースターの世界に迷い込んだ。合わせ鏡のようなニューヨークのビル街に身を置いて、無限に連なる虚像の中にいる主人公。読んでいるうちに、その存在の影がどんどん薄くなっていく。
「ガラスの街」のガラスという言葉がこの物語の曖昧な要素と喪失、そして孤独感漂う雰囲気を上手く表わしていると思う。
そのガラスの中にある透明な音色を表現してみたい。
[2]「土曜日」 イアン・マキューアン(新潮社 新潮クレスト・ブックス)
[3]「河岸忘日妙」 堀江敏幸(新潮社)