2006年 08月 03日
〜8/8 「 二人展 」 井上 務 + 大西 壮一郎

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井上務「神話の翼」
いつの頃からか、動物を対象とした作品を作ることが多くなってきた。
別に動物を描きたいからではなく、モチーフとして使っているだけで、本当は動物に向けられた人間のまなざしの方を表現したいのである。
自然。
作られたものでない、裸の野生に身を置く時、太古の歴史が囁きかけてくる。
断片化し、それぞれが星屑のように散っていた記憶や意識、言葉。それらいくつかの要素が、新たな衣装もまとうでなしに集まり、神話の姿を開示する。
その一方で、「自然はいい」というような調和的な世界観が読み取られるような場所に、僕たちはむしろ、一種の狂気の前兆を感じる。
秩序とその破綻が同じ地点で混在し、進むことも退くことも知らず、そこで立ちすくんでいる。
ゆっくりと世界全体が回り始める。やがて三つに分裂したそれと正面から対峙するはめになった僕は、あまりにそれが怖いので、あるはずもない名前を付けて、何十回も繰り返しノートに書き綴ったのだった。
外の思考と呼ばれるものの、何歩か手前の状態で、僕たちは地を這い回りながら、「どうも、そうなっているようだ」を探る。そしていかなる共同性とも結びつくことなしに、強度を経験したいと思う。
